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大王製紙 利益率・自己資本比率を高め、借入金を減らす努力をすべき

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今回は、元会長のカジノ資金流用問題で揺れる大王製紙株式会社です。前代未聞の博打への使い込みをした井川意高氏は、2007年6月~2011年6月まで、同社の代表取締役社長、それ以降は会長でした。オーナー一族であり、最高権力者の権力は絶大でした。

それでは分析してみましょう。

 

大王製紙の企業力総合評価は青信号領域ギリギリの悪化トレンドです。井川意高元会長が社長をしていた4年とぴったり一致しています。

営業効率(儲かるか)は悪化トレンドです。一番良い時(2007年)でも、2.2ポイント(天井値5ポイント)ですから良くはありませんでした。2009年のリーマンショックから2010年一度回復しましたが、再度失速し、赤信号領域に突入しました。2011年の売上高4,101億円、経常利益額55億円

経常利益率は1.34%、当期損失は80億円の赤字です。

 

資本効率(資本の利用度)も営業効率と同じ動きです。

生産効率(人の利用度)は青信号領域を安定しています。売上高の増減に敏感に人の採用を調整する会社です。

下グラフのように、売上高増加率と従業員増加率の形状が一致することからわかります。(増→増→減→減)

中小企業の場合はこの形状が一致する会社はぐっと少なくなります。つまり、中小企業は、数字を見きれていないということ。

 

資産効率(資産の利用度)は赤信号領域にドップリ浸かっています。

流動性(短期資金繰)は改善トレンドです。

安全性(長期資金繰)は5期連続赤信号領域にドップリ浸かっています。かなり問題。

 

大王製紙はエリエールなど、知名度の高く、売上高4,101億円と大規模な企業ではありますが、V字回復を目指すべき会社です。2010年に回復させた営業効率のV字回復を2011年更に推し進められなかったところに粘りの無さが表れています。トヨタ自動車と比較するとその差は歴然とします。

安全性の下位指標を見ていきましょう。安全性が赤信号に入っているということは、その下位指標の数字が悪いということです。

固定比率は、自己資本(返済不要なお金)を、(資金が寝てしまう)固定資産に投入した割合で、100%未満なら、全く問題なしです。これを達成している会社は多くはありません。

大王製紙は302.45%。

固定長期適合比率は、長期資金(自己資本と固定負債)を、固定資産に投入した割合です。これは100%未満でないといけません。大王製紙は89.23%ですので達成しています。固定比率が悪くて、固定長期適合比率が良い。逆転させたのは、固定負債の金額の多さです。

自己資本比率は、総資産に占める自己資本(純資産)の割合です。大王製紙は18.95%です。それでは、その他の81.05%は何か?負債の割合です。資産の80%超が借入金など、負債で調達されているということです。

大王製紙は、2011年の売上高4,101億円に対して、4,516億円の有利子負債を抱えています。経常利益額55億円ですから、この55億円の利益を元手に借金を返済しようと思ったら82年(=4,516÷55)かかるわけで、そのことが、安全性が赤信号領域に嵌っていると分析されています。現金預金が1,301億円あるからと言ってキャッシュリッチな会社とは言えません。借金してお金があるだけですから。ですから、流動性が青信号であることを単純に「良い」とだけ評価することはできません。

企業がどんな問題を抱えているかは、実数では分りにくく、財務分析をしても、相互関連性から読む必要があります。

まとめ 

大王製紙は、利益率・自己資本比率を高め、自社の借入金を減らす努力をすべき会社です。

井川意高氏は、東大法学部卒の超エリートでオーナー一族、かつ、大王製紙は、立派な財務部経理部を持つ1部上場企業です。経営に必要な知識はすべて持っているように思えます。しかし、井川意高氏は、大王製紙がどうなっていてどうすべきか、という状況定義が分っていなかったと言えます。

SPLENDID21NEWS第73号【2011年12月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

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山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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